D-13
タイトル(日本語) 終末期患者への人工的水分・栄養補給に関する倫理的判断
タイトル(英 語) Ethical Decisions Regarding Nutrition and the Terminally III.
著者名 Schwarte A
雑誌名,巻:頁 Gastroenterol Nurs. 2001; 24: 29-33
目 的

終末期患者への人工的水分・栄養補給の中止に関する様々な倫理的見解を示し、終末期患者の身体に見られる生理学的変化についても説明する。

研究デザイン 症例報告
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 記載なし
対象患者

1名

介 入

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
結 果 67歳の男性患者は1998年に胃食道接合部の扁平上皮癌であると診断された。意識は清明であったが、ADLにほとんど介助を要し、経口摂取はマウスケアのみであった。次第に疼痛、呼吸困難、消化管閉塞などの症状があらわれた。TPN、経静脈モルヒネ投与を開始し、胃内容物を胃瘻より吸引していた。その結果患者は疼痛から解放されたが、TPNを中止して欲しいと意思表示し、その要求はホスピスチームミーティングで検討された。キーパーソンである患者の娘と、ホスピス看護師、専門看護師、医師、牧師が参加し、それぞれの見解を述べた。何が患者にとって最善となるかが検討された結果、最終的に患者の意向どおりTPNを中止することとなった。
結 論

人工的水分・栄養補給に関する倫理的決断には4段階あると考えられる。
第一段階:すべてのメンバー(家族や医療チーム)が、患者に何がなされるべきかについて、それぞれの見解を述べる。
第二段階:メンバーそれぞれの見解のもとになる理由を知る。
第三段階:メンバーそれぞれの懸念を提示しあい、共通するものについて検討する。
第四段階:行動計画を立て、どれが最も適切であるかを決定する。

終末期患者の多くは、死期が近づくにつれ食欲を徐々に失い、全く食物摂取しなくなる時点では、食事摂取によって得られるエネルギーよりも、要するエネルギーのほうが上回る。患者はある意味では食べるということよりも、家族に別れを告げるなどのより重要なことがあるため、食べないことによって苦痛を感じているようには見受けられない。
 また終末期患者は家族のために無理に食べることがある。患者の経口摂取量をどうすれば増やすことが出来るかと、家族から看護師に質問があるような場合には、患者の身体にはどのような変化が起こっているのかを、看護師から分かりやすく説明できることが望ましい。
 患者の意思や自主性を尊重することは死にゆく人のケアに必要不可欠である。終末期患者が意思決定を行うことを可能にし、それを辛抱強く待つことによって、患者に主導権や尊厳を与えることができる。上記の倫理的決断の段階をたどることによって、与えられた選択肢の検討をし、それを患者に提示することが出来るので、患者や家族を重大な決断を下すと言う重荷から開放する手段になり得る。医療の問題には白黒つけられるものはほとんどないが、医療の専門家が人工的水分・栄養補給の中止のようなグレーゾーンにある倫理的問題を扱う際に用いるアプローチによって、その治療が、適切か、もしくは例外的なものであるかを区別することができるだろう。

コメント 人工的水分・栄養補給に関する倫理的決断の4ステップが示されている。
作成者 坂本沙弥香、浅井 篤