C-10
タイトル(日本語) 終末期ケアにおける水分補給についての家族の見解
タイトル(英 語) The Family’s Perspective on Issues of Hydration in Terminal Care.
著者名 Parkash R, Burge F
雑誌名,巻:頁 J Palliat Care. 1997; 13: 23-27
目 的
1.

終末期にある患者に人工的水分補給(artificial hydration:AH)を行うかの意思決定に際して家族介護者が認識する問題を記述する。

2.

症状の苦痛、文化、法律、倫理、情報交換の各領域に特有な問題を明らかにする。

研究デザイン 質的研究(半構造化面接、継続的比較分析法)
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 カナダのCamp Hill Medical Center(Queen Elizabeth II Health Sciences Centerに属する)提供の緩和ケアプログラム(在宅もしくは病棟)
対象患者

対象は患者の家族(主介護者)、1995年の6-8月に登録
例数:7名(患者の子供or配偶者)
年齢:44-69歳 性別および原疾患の記載:なし
生命予後:ほとんどの家族の介護期間は1-3ヶ月
全身状態(PS、体重減少、悪液質など):記載なし
病態:患者は経口による水分摂取困難、あるいは近いうちに困難になる状態

介 入

なし

主要評価項目(定義)・
統計学的手法

半構造化面接
経口摂取困難時のAH(人工的水分補給)についての家族の意思決定過程の詳細についてと関連事項を明らかにする。

結 果

経口摂取困難時の水分補給についての家族の意思決定に影響する要因として、症状の苦痛についての気がかり、倫理的事項、情緒的事項、情報共有、文化的背景の6つのカテゴリが同定された。法律に関する事項はみとめられなかった。

苦痛についての気がかり

水分補給をしなければ命が短くなってしまう」「水分補給をしなければ患者が非常に不快である」という考え方が、AHを支持する意思決定に関連。そこには、水分をいのちの象徴とみなす考え方がある。。

「AHは苦痛を長引かせるだけ」という否定的な考え方もある。

介護者が「AHは医学的問題・判断」とみなす場合は、意思決定が医療スタッフにゆだねられる。

倫理的事項

AHを支持する倫理的理由は、苦痛の緩和と生命維持である。実施しないことは医療者が最善を尽くしていないとみなされるかもしれない。
苦痛の緩和は、AHをしないことの理由にもなる(いたずらに生き永らえさせることを避ける)。
患者の自律性も意思決定過程に重要な要因である。自律性を尊重する介護者はAHをしない方向に傾くことが多い。 AHを専門職によって取り扱われる医学的問題と考える人の意思決定過程に、自律性は関連しない。

情緒的事項

意思決定は、「感情」とも関連している。
介護者はケアする義務を果たすことに喜びを感じる。AHをしない決定により喜びが失われる。一方、愛する家族が苦しむのを見ることは好ましくないため、AHが苦悩をもたらすこともある。

情報共有

「その時期が来たら、AHのメリットデメリットについて説明してもらいたい」と望む介護者が多かった。情報を不要とした介護者は「AHは医学的判断」とみなしていた。
文化的背景
中産階級のカナダ人という文化圏においてAHを支持する考えには、1)「栄養補給はケアのしるしである」という自然な見地、2)静脈輸液は基本的医療ケアのスタンダードであるという考え、3)医療者が最善を尽くすと考える介護者の信頼感というものがあった。
弱り苦しむものに同情を寄せ安楽を提供するという社会的価値観が、AHをする・しない双方の意思決定の理由付けとなっており、目指すところは同じでも水分補給の価値の認識には違いがあった。
家族全体の幸福への懸念がAHの意思決定に影響するという考えもあった。
結 論 水分補給について話し合う時機を適切にとらえ、1)AHについての患者の希望や認識を理解すること、2)AHのメリット・デメリットについてなどの情報を提供すること、3)実際に表出がなくても介護者が懸念を抱えているという認識をもつことが必要である。
コメント 症例数が少ない質的研究であるため、概念の一般化よりも探索的意味合いが強い。またほとんどの調査対象者が在宅緩和ケアを受けている患者の介護者であった。
作成者 栗原幸江