C-1
タイトル(日本語) 死にゆく患者に対する輸液は、道徳上必要とされるか?
タイトル(英 語) Are Intravenous Fluids Morally Required for Dying Patient?
著者名 Micetich KC, Steinecker PH, Thomasma DC
雑誌名,巻:頁 Arch Intern Med. 1983; 143: 975-978
目 的

死にゆく昏睡患者への輸液治療を、医師はどの程度必要と感じているか明らかにする。

研究デザイン 横断研究
エビデンスレベル not applicable
治療環境・施設名 病院(内科、外科、小児科)
対象患者

医師:96名が分析対象(218名の調査対象中44%)

介 入

なし

主要評価項目(定義)・
統計学的手法

<仮想ケース>男性、70kg、上部胸椎転移、疼痛コントロール目的で入院。広範な軟口蓋がんの播種。胸椎への放射線照射開始。入院18日目意識消失、心肺停止。蘇生後、痛みに対して無反応の弛緩性昏睡持続。心停止の原因は不明。末梢より輸液開始、呼吸機が装着されている。心停止前の電解質のレベル、肝・腎機能は正常。患者の回復の見込みはない。熱発はなく、血圧は120/80、尿量は30ml/時間。
この例への医師の対応・考えを以下の質問で尋ねる。
(1) IVを行うか、その種類と量
(2)末梢が簡単に取れる場合、輸液治療を再開するか? 
(3)点滴が漏れたときCV又は静脈切開ででも輸液治療を再開するか?
(4)3日間患者の昏睡が続き回復の兆候がない場合IVを中止するか?
(5)がんの末期で治療法はなく昏睡状態の場合、何をスタンダードなケアと考えるか?
〔(2)〜(4)では、家族は医師の推奨に従うものとする。〕
(1)の回答で十分な輸液を行う群と行わない群の2群に分け、(2)〜(4)の回答割合を算出。検定はしていない。

結 果

輸液を十分行う“十分量”群68名(73%)、十分量は行わない“非十分量群”25名(27%)。

漏れたら末梢IVを再開する:十分量群の84%、非十分量群の28%

侵襲的な方法(静脈切開やCV挿入)でIVを再開する:十分量群の40%、非十分量群の5%

患者の昏睡が3日間続いても輸液を継続する:十分量群の71%、非十分量群の32%

十分量群の50%は、輸液をスタンダードケアと考えていたが、非十分量群では全く考えていない傾向あり。
結 論 がんで臨死期の昏睡状態の患者に対し十分量の輸液治療を行うとした医師は73%であり、その71%は昏睡状態が3日間続いても輸液を継続すると答えた。この傾向には道徳的論議が必要であろう。
コメント 通常のケアとして輸液を位置づけている医療者は多く、当然のものとして行うのではなく、その必要性を問い直し、生理学的状態のみならず、道徳・倫理などの観点もふまえて検討が必要であると投げかけている論説。
作成者 長谷川久巳