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タイトル(日本語)

終末期の成人患者:食に対するニーズと願望についての文献レビュー

タイトル(英 語) Adults with terminal illness: a literature review of their needs and wishes for food.
著者名 Hughes N, Neal RD
雑誌名,巻:頁 J Adv Nurs. 2000; 32: 1101-1107
目 的

成人の終末期患者にとっての食の意味や目的、終末期の食思不振の理由、食欲減退や摂食拒否への対応の基盤となる倫理原則、食のニーズや希望に関する患者と介護者の社会的相互関係について、これまでに得られた知見を明らかにし、更なる実証研究の必要性を検討する。

研究デザイン システマティックレビュー
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 N/A
対象患者

N/A

介 入

N/A

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
1981年以降に出された英文論文をレビュー「終末期にある成人患者の食へのニーズと願望に関する知見」を検索クエスチョンとして、food, eating, nutrition, terminal care, dying, death, culture, hospice, palliative careをKey wordとした電子データベース(CINAHL, Medline, Sociofile)検索をした。特定のジャーナル検索も実施した(終末期に関連しない社会学・文化人類学分野の論文を含む)。
結 果

26文献が該当した。見出された重要テーマは食の意味や目的、終末期における食欲不振と栄養不良、倫理的意思決定であった。
「食」の意味や目的
「食」には単なる栄養以上の社会的・情緒的な「意味」があり、食べる人と食べさせる人との間の関係性にとって象徴的な意味合いをもつ。社会的・文化的な枠組みが何を食べるか、なぜ食べるかに影響する。こうした「食の意味」は非経口的栄養に対しても及ぶ。
終末期における食欲不振

栄養不良は食欲不振や腫瘍代謝により生じ、身体的(症状、褥創、倦怠感など)のみならず心理的(無気力、抑うつなど)影響をもたらす。それで栄養支援は終末期の安楽とQOL達成のために正当化される。

食欲不振は心理的原因で起きることもあり、適切な抑うつ治療で改善されることがある。

終末期には、最低限の飲食でも安楽を得られることがある。

文化的文脈で、死を予期し「望ましい死」への準備としてなされる拒食は好ましいとみなされることもある:死が容易になる、物質界から離れ来世に備える機会となるなど。この場合栄養支援は不適切とみなされる
「栄養支援nutritional support」という用語は多様な意味で用いられている。輸液や経管栄養のほか、食欲不振をもたらす苦痛症状の緩和により、食欲や自然に食べる能力を維持することを示すものまで幅広い。苦痛症状緩和により高齢終末期がん患者の92%が死亡当日まで食べることができたとの報告もある。

倫理的意思決定
終末期患者に対する栄養支援については、自律性、善行、無害、正義・公平という通常の倫理の4原則に加え、「誠実integrity」(看護師などの医療職が、自己の価値観や信念を自覚し責任をもち、それらを専門業務遂行に際して調和させていること)と「生命の神聖さsanctity of life」が追加される。それを問われる状況としては以下の二つがある。

1) 意思決定が可能な患者が意思表明をした際の対応:自律の原則が優位となるが、個人的、社会的関係が作用してくる。自分自身の在りようを維持するために無理に食事をさせる妻がいる一方、インドの調査では、死が近づけば摂食量は減少するという共通認識がある。
2) 患者に意思決定能力が望めないという状況:患者の事前指示がある場合には自律の原則が基本となる。それがない場合は、善行と無害の原則が中心となる。代理の判定が必要となることもある。
今後必要とされる研究:摂食ニーズや意思決定を巡る臨死患者と介護者との間のやり取りについて焦点をあてた論文はなく、今後求められる。
結 論

「食」をめぐる意味や目的について文化人類学的に研究されてきたが、医療の分野では、栄養摂取という医学的側面でしか認識されていなかった。患者の食欲が低下したり摂食拒否行動に出たりした場合の倫理的原則については研究されており、道徳的、法的に正当な行動を示す明確なガイダンスがある。しかし、社会情勢の急激な変化を考慮に入れて今後も議論が必要になってくる。

コメント 「食」「摂食行動」について文化人類学的な論文も含めた文献レビュー。特に終末期患者に対する対応の倫理的側面と対人関係上のやりとりの側面を取り上げている。輸液に限局した内容ではない。
作成者 栗原幸江