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タイトル(日本語)

進行がん患者における終末期消化管閉塞の性質とその影響

タイトル(英 語) The nature of terminal malignant bowel obstruction and its impact on patients with advanced cancer.
著者名 Gwilliam B, Bailey C
雑誌名,巻:頁 Int J Palliat Nurs. 2001; 7: 474-481
目 的

進行がんによる消化管閉塞が生じた患者の経験(主観的な認識や個人的な意味づけ)を現象学的に明らかにする。

研究デザイン 半構造化インタビューによる質的研究(現象学的アプローチ)
エビデンスレベル Not applicable
治療環境・施設名 The Royal Marsden Hospital NHS Trust, London,UK
対象患者

例数:10 年齢:53(23-77)歳 性別:不明
原疾患:卵巣がん6、卵巣肉腫1、子宮頸がん1、胃がん1、原発不明1
生命予後:7日〜11ヶ月(インタビューから死亡まで2名は不明)
病態:消化管閉塞
他:病院で緩和ケアサポートチームによるケアを受けている患者

介 入

なし

主要評価項目(定義)・
統計学的手法
看護師が患者の「経験の生の声」を聞き、その記述を現象学的に分析(Giorgi 1975, Parse 1985)
結 果

食べられないこと

消化管閉塞の患者にとっては、「食べられないこと」というのがもっとも重大な共通問題と認識されていた。

「摂食行動」を通じた他者との社会的なコンタクトの喪失や「社会的な存在」への侵害など、「食べられないこと」が社会的な意味合いをもつ。

食への強い執着の感情も述べられ、絶食の決定は軽くなされてはならず、QOLの観点から熟慮されるべきといえる。

活動性の変化
身体機能喪失、自立性の喪失は「健康」から「病気」への移行を象徴し、他者との社会関係の変化(孤立)やその人らしさの喪失をももたらす。
思考能力低下
身体的なエネルギーの低下とともに思考能力低下があり、人間関係の喪失とともに自己の完全な喪失となる。
社会的な孤立
食べられないことによる身体的認知的機能の低下により社会参加は次第に困難になり、次の2つの過程で孤立していく。
(1)通常の役割遂行不能あるいは社会的ネットワークへの参加不能
(2)身体的な孤立感

待 機
消化管が動くことや治療方針の決定などを「待つ」という状態により、「落ち着かない」「居場所のなさ」といった不安が増悪する。

方針の欠如
方針が見えないことが対応を難しくし、「身動きが取れない」といった感覚を生じさせる。

個人的な振り返り
10人中8人が消化管閉塞により自己アイデンティティーが根底から揺らぐ経験をしている。

看護スタッフが患者にとって主要なサポートとなりうる。
結 論

患者にとって食べられない状態というのは、単に身体機能上への影響のみならず、社会的な関係性からの孤立という影響を持つ。それは「食べられない」ということが単に栄養失調や生理的な損失以上に重大な「意味」を持つということを示す。それは「健康人⇒病人⇒死にゆく人」というアイデンティティーの変容にもつながる。看護スタッフとのやり取りを含む社会的な関係性の認識は、患者が「自己アイデンティティー」を再構築する上で大切である。

コメント 消化管閉塞を生じた患者の「生の声」をまとめることにより、患者の気持ちや考えに対する理解を深めることを目的にした論文。
作成者 栗原幸江