A'-12
タイトル(日本語) 終末期がん患者における非経口的水分投与の効果、予備調査
タイトル(英 語) Effects of parenteral hydration in terminally ill cancer patients: A preliminary study.
著者名 Bruera E, Sala R, Rico MA, et al
雑誌名,巻:頁 J Clin Oncol. 2005; 23: 2366-2371
目 的

脱水を伴った終末期がん患者における症状緩和に対する皮下・静脈輸液の効果を評価する。

研究デザイン 2重盲検無作為化比較試験
エビデンスレベル II
治療環境・施設名 The university of Texas M.D. Anderson Cancer Center, Houston, TX(大学病院、USA)、Hospital Eva Peron(アルゼンチン)、Instituto Nacional de Cancer(チリ)、Clinica de Dolor(コロンビア)、Centro Resional de Medicina(スペイン)
対象患者

例数:49例(治療群:27例、プラセボ群:22例)
年齢:63歳(28-90歳) 性別:男性53%、女性47%
原疾患:消化器癌:37%、肺癌:18%、泌尿器癌:12%、乳癌:8%、婦人癌:8%、他:18%
全身状態:PS1:14%、2:37%、3:37%、4:12%
病態:軽度から中等度の脱水所見(鎖骨下ツルゴールの低下が2秒以上)、かつ、水分経口摂取が1000ml/日以下、かつ、以下の症状を一つ以上(口腔乾燥、口渇、患者による尿量の低下、黄疸や血尿によらない普段より暗色な尿、研究開始24時間以内におけるBUN/Cre比が20以上など脱水による血液検査の変化)
除外基準:安静時収縮期血圧が通常に比べて30mmHg以上低下、末梢循環不全、12時間以上排尿がない、意識低下、重篤な腎不全や両側水腎症

介 入

1,000mlの生理食塩液投与(治療群) vs 100mlの生理食塩液投与(プラセボ群)

4時間投与。2日間

もともと静脈ルートのある場合は静脈内投与(n=12)、ない場合は皮下投与(n=37)
各施設の一人の観察者が各々の生理食塩液を準備、注入ポンプで量が解らないように投与、それ以外の観察者が症状を調査
主要評価項目(定義)・
統計学的手法

患者・観察者が、幻覚、ミオクローヌス、疲労感、鎮静(0-10のnumeric score;1以上の低下で改善)、全体的状態(global well-being; 0-10)、MMSE、全体的利益(overall benefit;1-7)を評価。皮下注射では局所症状(疼痛、腫脹、漏れなど)

結 果

治療群ではのべ73評価症状のうち53個(73%)が改善したが、プラセボ群ではのべ67評価症状のうち49%しか改善せず有意差があった。

幻覚(82% vs 50%)、疲労感(54% vs 62%)、全体的状態(1.4±4.1 vs 0.8±3.1)、全般的利益(3.8±2.2 vs 3.6±2.0)は有意差がなかった。

ミオクローヌス(83% vs 47%)、鎮静(83% vs 33%)の改善率に有意差が認められた。
皮下注射における刺入部の疼痛と腫脹は有意差はなかった。
結 論

経口摂取が低下した終末期がん患者において、非経口的水分投与は脱水による症状の軽減に役立ち、皮下・経静脈輸液は認容できる治療である。しかし、プラセボ効果も認められ。大きなサンプルで観察期間のより長い検討が必要である。

コメント 輸液の分野では非常に困難なrandomized, controlled, double-blind studyである。これまで著者らのグループが主張している、1,000ml/日程度の輸液がオピオイドの神経毒性などによる症状の緩和に有効であることが示唆されている。但し、1-2週間程度の輸液効果の判定や適切な投与量の検討までには至っておらず、体液過剰症状は測定されず、全般的快適さへの有意な治療効果は示されなかった。
作成者 池永昌之